ガスコンロや給湯器に利用されるガスには、プロパンガス(LPガス)・都市ガスなどさまざまな呼び名のものがあります。普段は何気なく使用していることもあり、「名前は知っていても、何がどう違うのか分からない」という人も多いでしょう。プロパンガスとLPガスは、厳密には定義が異なるものの、生活の場では同じものとして使用されることが一般的です。
この記事では、プロパンガスの基礎知識と都市ガスとの違い、主な特徴や利用するメリットを解説します。プロパンガスを利用する際の注意点も紹介するため、ガス会社選びに迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
1.プロパンガス(LPガス)とは?
プロパンガスとは、LPガスの1種です。LPガスは「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の略称であり、液化石油ガス法によって3種類の規格に分かれています。LPガスのうち、家庭用・業務用として使用される「い号液化石油ガス」の主成分がプロパンであることから、「プロパンガス」と呼ばれるようになりました。
LPガスは加圧・冷却によって液化され、ガスボンベに詰められた状態で各家庭に設置されます。ガスを使用する際は調整器で減圧・加温し、気化したガスに着火して利用します。
1-1.LPガスと都市ガスの違いは?
家庭で使用するガスとして、よくLPガスと比較されるのが都市ガスです。LPガスと都市ガスの主な違いは、下記の通りとなります。
LPガス |
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都市ガス |
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また、使用できるガス機器もLPガス用と都市ガス用で異なるため、転居などの際には注意しましょう。
2.LPガスの主な特徴
「都市ガスは比較的安価である」というイメージが広まっているため、できれば都市ガスを選びたいと考える人も多いでしょう。しかし、ここでネックとなるのが供給エリアの狭さです。都市ガスの普及エリアは、国土面積の約6%しかありません。
「都市」ガスという名の通り、ガス導管が整備されている地域は都市部に集中しています。近年はガス導管の通っていない郊外への移住を選ぶケースも増えていることから、日本全国ほぼすべての地域で使用できるLPガスの需要が高まりつつある状態です。
LPガスの使用を検討するときに知っておきたい、主な特徴を3つ紹介します。
2-1.空気より比重が高い
LPガスは、空気よりも比重が高い気体です。プロパンガスが気化すると空気の1.52倍ほどの重さとなり、ガス漏れの際LPガスは部屋の低い位置に溜まります。そのため、LPガス用のガス漏れ警報器は部屋の下部へ設置します。
LPガスが漏れた場合は窓を開け、うちわを低い位置で扇いだり、ほうきで掃き出したりしたほうが安全です。また、ガス漏れによって避難が必要になった際は、低所に溜まったガスを吸い込まないよう、「無理に階下を目指さない」「姿勢を低くしない」といった点にも注意しましょう。
2-2.熱量が高い
LPガスは都市ガスと比べて熱量が高い、つまり強い火力が出せることが特徴です。都市ガスの熱量は11,000Kcal/m3ほど、対してプロパンガスの熱量は24,000Kcal/m3ほどと約2.2倍の差があります。
家庭用のガスコンロでは、都市ガスでもLPガスでも同程度の火力となるよう調整されているため、使用感に差は生じません。しかし、業務用のガスコンロなら同量のガスでより強い火力を使用できることもあり、都市ガスが利用できるエリアでも、LPガスを好んで選択する飲食店は多い傾向です。
2-3.無色・無臭
本来、LPガス自体は無色・無臭であり、例え空気中に漏れてしまっても気づけません。ガス漏れが起こった際に危険なため、LPガスは安全対策として腐った玉ネギに似たニオイを添加してから流通させています。これが、いわゆる「ガス臭い」と呼ばれるニオイです。
通常であれば、ガス臭さを感じることはほとんどありません。ニオイがしたとしても着火・消火時に感じるくらいであり、せいぜい5分程度です。もし普段よりもニオイが強いと感じたり、5分以上継続してニオイを感じたりする場合は、即刻緊急連絡先へ通報してください。
3.LPガスを利用する主なメリット
同一エリアであれば、都市ガス代はどこの販売会社でも大して価格差はありません。しかし、LPガスは販売会社によって価格設定にばらつきがあります。これは、LPガス料金の設定に法律の規制がなく、自由料金制が採用されているためです。
原料費や配送管理にかかる人件費といったコストに加え、LPガス販売事業者がそれぞれの利益を考慮して料金を設定しています。ガスの利用料金を抑えたいと考えるのであれば、複数のガス会社を比較してサービスを選択する方法がおすすめです。
ここでは、LPガスを利用する主なメリット3つを解説します。
3-1.どの地域でも基本的に供給可能
LPガスならではのメリットとして、利用できる地域にほとんど制限がないことが挙げられるでしょう。
都市ガスが利用できるのは、ガス導管が整備されている地域のみです。また、都市ガスを利用する自宅や店舗の敷地内へ、配管の引き込み工事が行えなければなりません。一方、LPガスの場合はガスボンベとガスボンベが設置できる場所、LPガスに対応したガス機器さえあれば、山奥や孤島など日本全国どこでも利用可能です。
3-2.災害に強い
災害発生時、ガス供給の復旧が早い点が、LPガスのメリットとして挙げられます。ガス導管を共有する都市ガスは、供給網のどこかで異常が発生すると、遮断不可能なすべての地点で安全性が確認されるまでガスの供給が再開されません。
一方、LPガスは契約者ごとに個別でガスボンベを設置する供給方法です。異常や故障の発見・修理・点検作業が早く終わり、復旧までの時間が短くて済みます。また、LPガスは基本的に偶数本設置され半数ずつ交換され、常に約1か月分の使用量がストックされている状態のため、機器の点検が終わればすぐにガスを使い始めることができます。
さらにLPガスはガスボンベごと移動でき、最低限の設備があれば設置可能なため、避難所や仮設住宅でも利用されます。あらゆる災害にも強いLPガスは、「エネルギーの最後の砦」とも評されるほどです。
3-3.環境にやさしい
LPガスも化石燃料の1種ではあるものの、石油や石炭と比べて二酸化炭素の排出量が少ないという特徴があります。燃焼時に硫黄酸化物や浮遊性粒子状物質といった環境へ悪影響を与える有害物質を排出しないことも、クリーンなエネルギーとして評価されている点です。
また、製造・送電時のエネルギーロスが60%程度ある電気に比べて、ガスは製造・輸送時のエネルギーロスがありません。IH機器とガス機器のエネルギー効率を考慮しても、LPガスのほうが無駄なくエネルギーを利用できることから、環境に優しい燃料だと言えるでしょう。
4.LPガスを利用する際の注意点
LPガスは、一般的に都市ガスよりもガス料金が高くなりやすい傾向があります。
LPガスの料金システムは基本料金+使用量×従量単価となっており、従量単価はガスの販売会社ごとに大きく異なります。これは、自由料金制が採用されている上に、利用者に対して料金表を公表する義務がないことが理由として挙げられるでしょう。
適切な金額でLPガスを利用するためには、透明性のある会社を選ぶ必要があります。例えば、原料の輸入価格に応じてガス料金を変動させる「原料費調整制度」を取り入れている会社などです。もちろん、原料が高騰すればLPガスの料金も上がりますが、上がった理由が常識の範囲内であれば、値上げにも納得し、安心してガスを使うことができるでしょう。
まとめ
プロパンガスはLPガスの1種であり、家庭用・業務用としてボンベに充填されて供給されるガスの別称です。都市ガスと比べて料金が高めとなる可能性が高いものの、利用エリアの広さや災害に対する強さといった多くのメリットがあります。
LPガスを適正料金で利用したい場合は、透明性が高い料金設定のLPガス・プロパンガス会社を選ぶことが大切です。エナキスでは、長野県内でも数少ない原料費調整制度を導入しています。調整された料金は毎月チェックでき、1円単位の料金シミュレーションも可能なため、ガスの契約先に迷っている人はエナキスをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。